麻酔科専門医試験の筆記対策として、よく言われることがあります。
「過去問を回せば受かる」。
私もそう聞いて、実際にそうしました。市販の過去問解説集6年分をAnkiに入れて回しただけで、参考書は一冊も読んでいません。結果として、常勤で働きながら一発合格できました。
ただ、受験前は不安でした。本当に過去問だけでいいのか。教科書を読まないで大丈夫なのか。
その答えは、実は学会自身が毎年公表している数字の中にありました。
学会は、問題の種類別に得点率を公表しています
かつての筆記試験は、A問題(既出問題に基づく出題)とB・C問題(新作)に分かれていました。そして日本麻酔科学会は、講評の中でその得点率を公表しています。
2019年度 A問題 約87%/B問題 約45%
2020年度 A問題 約93%/B問題 約53%/C問題 約67%
2021年度 A問題 約95%/B問題 54%/C問題 58%
既出問題では9割前後取れるのに、新作は5割前後しか取れない。これは特定の誰かの話ではなく、受験者全体の平均です。
そして2021年度の講評には、こう書かれています。
筆記試験は、既出のA問題で高い点数を取得することにより、新作問題のB、あるいはC問題に若干の取り漏れがあっても、総合的には合格基準点となる傾向がある
出題している側が、過去問で稼げば新作を落としても合格基準に達すると書いているのです。
2022年度から名称は「一般問題」「症例問題」に変わりましたが、出題の作り方が変わったわけではありません。過去問由来で確実に得点し、新作の取りこぼしは許容する。これが、公表データに裏付けられた戦い方です。
合格率は10年間ずっと安定しています
ついでに、筆記試験の合格率も講評から10年分並べておきます。
2016年度 88.0%
2017年度 88.7%
2018年度 84%
2019年度 90%
2020年度 94%
2021年度 93.9%
2022年度 92.8%
2023年度 91.3%
2024年度 89.5%
2025年度 90.50%
10年間ずっと84〜94%の範囲です。難化も易化もしていません。
ちなみに3科目合計の合格率は、2022年度に72.0%まで落ち込んでいます。ただしその原因は筆記ではなく口頭試験です。筆記で必要以上に消耗しないことが、結果的に口頭対策の時間を生みます。
ただし、学会の「建前」も書いておきます
公平のために書きます。2016年度の講評には、こうもあります。
専門医試験を機会に、教科書を通読したり、専門誌を読み込んでおくことが推奨される
学会の立場としては、こう言うほかありません。専門医の質を担保する試験である以上、「過去問だけやれ」とは言えないからです。
建前と実データの両方を見たうえで、自分の時間をどこに配分するか。ここは各自の判断だと思います。
私は、働きながら9か月で合格することを目的に置いたので、過去問に全振りしました。
では、過去問を何周すればいいのか
「過去問は3周」とよく言われます。私は数えていませんでした。Ankiに任せていたからです。
試験が終わったあと、アプリの統計を開いて驚きました。
作成したカード 838枚
のべ学習回数 7,284回
1枚あたり約8.7回。実質的に8〜9周していた計算です。
自分でやろうとしたら、絶対にこの回数にはなりません。Ankiに任せると、覚えにくいカードは自動的に何度も出てきます。易しい問題は2〜3回、苦手な問題は15回以上という配分に、勝手になる。
この配分を自分の頭で管理しないで済むことが、Ankiを使う最大の理由だと思っています。
もうひとつ、意外だった数字
同じ統計に、こういう項目もありました。
学習した日数 152日
準備期間は2025年1月から10月の試験日まで、およそ285日です。つまりおよそ2日に1日しかやっていません。
準備期間の半分近くは、Ankiを1枚も開いていない日でした。当直明け、緊急手術が続いた週、単純に疲れて寝た日。
受験前の私がいちばん知りたかったのは、この数字でした。「毎日やらないと落ちるのか」という不安に対する答えです。
答えは、2日に1日で足ります。
詳細はnoteにまとめました
この記事に書いたのは、結論の部分だけです。
実際にどう進めたのかは、noteにまとめました。学習統計のスクリーンショットも全部載せています。
・838枚のカードを、何日で作ったか
・スキャン代行の費用とプランの選び方
・デッキの分け方と、タグを使わない理由
・正答率、復習間隔、時間帯分析の実データ
・AIの使い方(効いた使い方と、失敗した使い方)
・本番の出題内訳と、新作問題への向き合い方
・CBT当日の全記録(持ち物、待機室、時間配分、そして私がやらかした失敗)
・受験申請のスケジュールと費用の全内訳
特にCBT当日の部分は、ネット上にほとんど情報がありません。私は本番で最後の5問を見落としたまま進んでいて、残り10分で気づきました。同じことをする人が一人でも減ればと思って、正直に書いています。

口頭試問については、過去問14年分を解析した別の記事にまとめています。

おわりに
特別な才能も、まとまった勉強時間も必要ありませんでした。
必要だったのは、1月に着手するという判断と、やれない日があっても気にしないという割り切りだけです。
今年受験される先生、そして来年に向けて動き出す先生の、何かの役に立てば幸いです。
※本記事は2025年度(第64回)の受験経験と、日本麻酔科学会が公表している各年度の講評に基づく個人の記録です。試験の形式・日程は年度により変更されます。最新の情報は必ず学会の公式発表をご確認ください。


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